コロナ渦中での経済と生活事情 | クリエイターの悶絶生活編集部

コロナ渦中での経済と生活事情

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音楽家として生活していると、普段から「もしかしたら世間一般的な生活からズレているかもしれない」という感覚は常に思っていましたが、このコロナウィルスの世界的な影響は当然ながら、ズレずに否応なしに受けることになりました。しかし私の場合正直なところデメリットばかりではありません。個人的な、いち音楽家の経済事情と生活の例として読んでいただければ幸いです。

まず、私は作曲家としてはいま3年目(デビューから)で、やっとこさ継続した依頼や案件をこなせるようになってきたレベルなので、収入としては「印税生活!」みたいなイメージのものからは程遠いのですが、生業としては段々成り立ってきているような印象です。

(現在もですが)作曲家になるまでは、ギタリストとして演奏やレコーディング、レッスンの仕事のみで生計を立てており、この3年はそのバランスを取ろうとしながら活動してきました。ただ実働が多いギタリストの活動は、”演奏している時間”は全体からするとほんの少しで、曲の仕込みから数回に渡るリハーサル、その現場や本番の会場への移動、楽器の調整や音作りなど、特にツアーになるとほとんど自宅に居ることができない状態が続くので、作曲に注力できない期間もとても多く、その点はすごくもどかしく思っていました。

そんな時に今回のコロナの影響で、見事なまでに3、4月の演奏スケジュールがなくなってしまいました。キャンセル補償のある仕事もありましたが、口約束みたいな物も多いので泣き寝入りのような案件も多かったです。特に自分でサウンドディレクションと制作、大所帯の楽器メンバーのキャスティングまで担当していたコンサートが無くなったのは精神的にもきつかったです。

また、個室でかなり密になるギターレッスンの仕事も、教えている学校が休講になることにより全てキャンセル。プライベートで習ってくださっている生徒も多いのですが、自主的に中止にしました。
この「演奏」「レッスン」の仕事は、収入としては即支払いの場合が多いので、この2本柱が無くなることにより目先の収入がなくなってしまいました。

ただ、正直な所私にとって仕事の重要度のバランスとしては「作曲」が最優先で(意識として)、演奏やレッスンの仕事も当然大好きなのですが、「正直、君が受けなくても良いんじゃないの?」と言われる仕事もやっていました。例えば学生時代からお世話になっていたレストランで、ほぼ”ボランティア”でBGMの演奏を続けていたり、理由としては、極力頂いたご縁は守りたいということでやってきました。
作曲の案件の場合は、演奏のようにその場のものでなく、数ヶ月先を見据えての発注が多いので、全体的には減りつつも、そもそもリモートで可能な仕事なので無くなる事はありません。(当然事務所による篤実な営業を行って頂いてる結果ですが)
単価は実働(演奏)より比較的高い事も多いイメージですが、性質上数ヶ月(長ければ年単位)先にギャラが支払われることも多いので、普段から”即支払い”の「受けなくても良い仕事」つまり目先のカネを優先してしまっていた自分に気づきました。

どうしてもコンペは採用にならないと仕事にならない、という考えの所に、たとえ安くてもその場の仕事が舞い込んでくるとそっちに寄り道してしまっていました。結局寄り道しすぎずに1つ1つ注力していかないと、より多くの結果が出るのがどんどん先延ばしになってしまう。というのを解ってはいたのに、なかなか打開する状況を作れていない自分に、今回のコロナ事情が無理やり舵取りをしてくれたような印象です。他動的に時間が出来たことにより、本来するべき「作曲」に注力できる時間が存分にできました。結果、普段なら参加しないジャンルのコンペ案件もチャレンジしたり、より入念な下調べとデモの段階からフルコーラス作ってみたり、決め打ち案件にもより時間と労力をかけ、結果として良質な作品作りができるようになってきました。(主観ですが)

先の通り、目先の収入は減ってしまいましたが、より作曲で結果を出せば良い話だと思うので(笑)自分の尻を叩くつもりでさらに頑張って行こうと思っています。幸い、普段からお金は使いがちですが、貯金もしている方なので、しばらくは減収入でも支出も減った分、ジリジリ身を削りながら生活はできるし、それより大事な「時間」をたくさん手に入れられたのは、自分にとってかなり大きな収穫でした。もちろん1日中作曲している訳ではないので、色々続けていたタスクもしっかりこなせるようになってきており、逆に日々忙しく過ごしています。

かなり個人的な話ですが、私のメイン楽器はギターなので普通以上に上手い自覚はあるのですが、「ドラム」「ベース」「ピアノ」「歌」それぞれの練習時間を増やし、外国語の勉強、さらには筋トレ、自炊。あと10年くらいほぼ封印していたゲーム(笑)。これらも時間があるので滞りなくこなせるようになり、ストレスはありません。コロナが終息した後の世界を見据えて、しっかり自分をバージョンアップしておくことで、いま活動自粛せざるを得ない音楽家は日々奮闘しています。

ただ、活動できなくなったから○○始めました!とか、とにかく配信しました〜!とか、”別に好きでもない”アーティストのカバーとかコラボしたり、この期間が「焼け石に水」みたいな事にならないようにだけは気をつけたいです(笑)。
自粛期間が長引く恐れがあったり、日々事情も変わっているので、この先ずっとこの調子で上手くできているとも限らないですが、どんな状況でも、自分のやりたい事とは真摯に向き合っていきたいと思った、この文を書いている4月末の段階での状況でした。

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海津信志

キッチリと手堅く制作できる、不得意ジャンルなしの大器晩成型ギター系ソングライター

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