第03条 作品の強化方法 | クリエイターの悶絶生活編集部

ポイント

全体的な完成度アップの為に、作品の弱点を徹底的に改善して、競り際に強くする制作力を身につけましょう。

対策01

ストック必要数

プロになるのに必要なストック数なんて、答えようがありません。制作慣れするのに、ストックはいくらでも必要です。

  • 制作しない人は「ただ夢を見てる人」
  • 自分の強みが言えないのは「ただの練習不足」
  • 50曲以下のストックは「ただのゴミ」
  • 100曲以上のストックは「ただのストック」
  • 継続できないのは「ただの無知」

対策02

下積み時代

毎週オリコンチャートを確認して制作歌手を検討したり、歌番組に出演している歌手の次の新曲をイメージして制作してみましょう。その際、以下の点に注意が必要です。

  • 過去曲から音域を確認して、その範囲内でメロを制作
  • 自作自演のアーティストではなく、作品提供されている歌手を選択
  • 対象歌手の過去曲や参考にした楽曲と似ない様に制作

対策03

妥協は禁物

周りの人みんなにキャッチーだねと言われるぐらいまで、自分の満足度を上げて鍛錬する事が大事です。ありきたりに気付かないといつまでも採用されないので、制作→課題→対策を繰り返すのと他人にダメと言われないと判断力が身に付きません。少しでも近道する為には、以下の点に注意すると良いでしょう。

  • 制作するアーティストは徹底的に理解してから取り組みましょう。アニメや事前に情報公開されない案件の場合は、必要な方向性を楽曲企画力で補い、妄想力を駆使して提案する楽曲力を積み上げていきましょう。
  • メロは1音符に至るまでこだわって、必要最小限の音数だけで表現すると良いです。無駄な音は、覚えやすさ(=キャッチー度)が犠牲になるからです。
  • メロはラインも大事ですが、ブレスポイントも非常に重要です。新人の頃は、フレーズを作ることに意識し過ぎる傾向があり、大御所の作曲家ほど日本語に合いやすい様なメロの粒立ち感やブレスポイントを重視して制作しています。「間」が十分確保されていると、「メロに歌心が宿る」「モチーフも覚えやすくなる」「歌い手のポテンシャルも発揮しやすい」「コール&レスポンスがしやすくライブ映えする」という、一石四鳥の効果になります!長く愛される楽曲になる為にも「間」を作曲するのが大事なのです。
  • 定番過ぎるコードは、散々過去に開拓されつくして名曲だらけです。従って、「楽曲が古くなる」「メロに新鮮味がなくなる」等デメリットしかありません。古めの参考曲の場合でも、例えばサビぐらいは自分なりの感覚で進化させた独自のこだわりは必須になります。半歩でもいいので、自分なりに創意工夫しましょう。
  • 常に未開の地を意識して下さい。例えば、楽曲集約時に手薄になりがちな「6/8」「超アップテンポ」「ハネ系」「倍テン」等で制作しておくと、楽曲が埋まらなくなり採用確率が格段にアップする傾向があります。もしくは、世界の民族楽器を活用するのもオリジナリティになります。要するに、常に「時代の隙間」を意識して取り組むと良いです。
  • 聴き終わりが充実する様に、メロや構成等を進化させましょう。サビ前インパクトやサビ終わりを濃い目に演出したり、3サビの繰り返し方を創意工夫する等、楽曲を自在に操る事で存在感が出てきます。

対策04

歌詞はテーマ性と脱死語

アーティスト自身が書く歌詞ではなく、外部の作詞家が提供する場合の歌詞は、「ありきたりからの脱出」が第一歩になります。新曲で世の中に発表する訳ですから、歌い手の年齢層なりの視点で「時代の空気感」は大事です。ここで言う死語とは、使い勝手が良かった為使用頻度が高くなってしまったという背景もあり、古く感じるリスクとなります。使い方次第ではまだまだ成立する時もありますが、なるべく使用を控えましょう。

■死語リスト心の(&勇気の)扉/ひざを抱えて/(限りない?)空、空は繋がっているから、(頬をなでる?)風、(ギラつく)太陽等々の花鳥風月的なテーマ/砂の上の足跡/運命(さだめ)、時代(とき)、破片(カケラ)、体温(ぬくもり)、プリズム、スパーク、彷徨う等の古い当て字やフレーズ/ドキドキが止まらない、トキメキの導火線的な昭和感/河は海へ繋がってるから、やまない雨はない、明けない夜はない、涙の後には虹がかかる、涙を散りばめた星空等の古い比喩表現/瞳に映る人は誰?/視線がぶつかる/出会えた奇蹟/ずっとそばにいるよ/君がいたから強くなれた/負けない(で)/~のセリフ/こんなにも伝えたい事があるのに…/君に届く様に歌う的な歌ネタ全般/ずっと好きorずっと守りたいor永遠に愛してる(漠然とした告白表現全般)/両手(=翼も同様)を広げて/君は君のままでいい(自分を信じて等酷似フレーズ全般)/大丈夫という安易な励まし/神様(にお願いする全般)/会いたいのに君はいない等逆フレーズ的文字の無駄遣い/絆/交差点/!(=ビックリマーク)/レター(もしくは日記)/希望、未来、夢等の漠然とした表現全般


作詞家が自由に提案して欲しいと言われる事も多いですが、そもそも新人の作品が弱くなる理由として圧倒的に多いのは「テーマ性の弱さ」に尽きます。良くありがちな程度の物語の深さで設定も浅めの内容では、人の心に刺ささるリアリティは生まれません。体験談から制作するのも一案ですが、それだと早晩ネタ切れに陥ります。従って、与えられた楽曲のインプレッションから何を描きたいのか、まずはその企画力(=プロデュース力)を徹底的に磨くと良いでしょう。その上で、作品のリアリティを追求するあまり、歌手との親和性が犠牲にならない様に注意も必要です。作詞家として制作するのを最優先するのではなく、プロデューサーとして感度を磨かないと「方向性が大丈夫なテーマ性」は見つかりにくいのです。以下はほんの一例ですが、指定がないからといって相応しくないテーマは避けましょう。

■NG設定・結婚ソング(結婚を意識するぐらいの深いラブソングも同様)は、ファン心理として素直に応援しにくい方が少なからずいるのと、万が一スキャンダルが発生した時に叩かれてしまい、どんなにいい曲でもライブで歌いにくくなってしまいます。
・車好き、もしくは普段電車を使わないのを公言している歌手に、駅のホームの設定はイメージが合いません。
・「君を片時も離さない」を具体的に表現する様なストーカー的に見えるラブソングや、自分を卑下する様なモテなさそうな描写もイメージが合いません。
・(企画として指定されていない場合に)クリスマスやバレンタイン、ハロウィンなどピンポイントの季節感は、発売時期によっては不採用のリスクになります。それに、ライブの時期によってもライブで歌われにくいとも言えます。
・社会貢献的に見えるネタもあざとくなりますし、貧乏っぽい苦労のイメージもアーティストとの親和性として合致しにくく、誰に売りたいかも不明瞭になります。
・重い病気や事故、事件の具体的な描写も必要ないです。
・20代過ぎの歌手に対して、学生時代の様な青春感は気恥ずかしくなります。
・人生がバラ色すぎる内容や、自分の努力を積み上げると成功できる等のオラオラ系も相応しくありません。


その上で、歌詞の制作時は以下の事に気を付けましょう。

①無難な言葉や死語表現を徹底的に排除人の気持ちをエグる様なリアリティを追求しているので、テーマも漠然とした設定にはせずに、等身大でリアルな表現を心掛ける。 「ずっと側にいて欲しかった」だといつとか何故?が分かりにくい漠然とした表現になるが、「ずっと手を離さないでいてくれた」だと時間の範囲が狭くなる分多少でもリアリティが増す。つまり、歌詞は抽象的な表現は極力使用せずに、主観的な視点で表現する様に心がけると良い。
アマチュアの歌詞は、ベタな一般論でみんな分かりきっている事を創意工夫もなく並べてしまい、「確かに」と思えるポイントがない作品は「何もドラマ性を生まなくなる」ので、その点に十分に注意する必要がある。

②メロディを理解するメロディの起伏により言葉をイメージする。メロディの構成ごとに話の展開感を意識する。特にメロの起伏に言葉のイントネーションが良いと「ハマリの良い歌詞」になり、更に言葉が良いと「イヤーキャッチ」と言われるレベルになる。

③情景描写で心の動く瞬間を捉える例えば、ラブソングでデートを描く時に彼氏の服装や歩く距離感などで、付き合い始めてどの程度かは表現可能。手の繋ぎ方や力の入れ具合、メガネを外した時の遠くを見る目とか、ちょっとした情景描写で気持ちが伝わる瞬間を描く様にする。

④強みをアピール作詞家として、「物語性」「比喩表現」「韻を踏む」「ダブルミーミング」「英語と日本語の響きを似させる」「逆説歌詞」「色彩感が強烈」等々、日本語を職業にする為に色んな引き出しを開拓していく。

⑤キラーフレーズ力を鍛える情景描写や心理描写だけではなく、さりげなく良い事を言うスキルを発揮して、作品の深みを追及。その為には普段からグッとくるキラーフレーズを開拓して、サビ始まりやサビ終わり、大サビ等で活用できれば、「一発採用の最短距離!」

⑥ギリギリの臨界点をエグって、作品の強度を追求例えば「会いたいのにキミはいない」と書くよりも、「会えないとどうなってしまうか」をリアルに描く様にする。人の心が動く瞬間を捉えると良いので、崖っぷちに片足ブラついている様なギリギリの描写ほどいい。最近は、(彼氏の)待ち受け画面にキスをしたとか、少し病み気味だと印象強くなることもある。

対策05

デモのアレンジ

作家に求められるアレンジは、「沢山の楽器が鳴っている事」ではありません。無理にアレンジしても素人感丸出しで、墓穴を掘るだけです。スキルが不十分のバンドメンバーで1発録りの様なデモも、素人感にしかなりません。昨今では、パソコンのプロ用の音楽ソフトを使用してその楽曲の魅力を伝えるアレンジまでは求められます。もし自分で出来なければ、得意な方とチームを組むか自分で勉強するかの2択です。どの様に勉強したらよいかは、似ている楽曲を探して、同じように制作してみるのが正攻法だと思います。

対策06

仮歌の録音

  • 仮歌のキャスティングは、楽曲イメージとの合致性やその方のスケジュールと対応力など、十分に確認しましょう。仮歌は、作品を活かすも台無しにするのも完成度に一番大きい影響を与えると言っても過言ではありません。慎重に検討しないと、キャスティングミスは自己責任になります。
  • 歌いにくい箇所は、ボーカリストのスキルのせいではなく、メロに一因があると考えましょう。
  • 下積みの時代に自分で歌を沢山録音して、歌い手に指示ができるのも将来的に必要なスキルになります。ただ楽曲提出時は、仮歌は知り合いの中で最も上手い人に依頼しないと採用されません。何故なら、楽曲の魅力を伝える印象に一番影響が出るからです。従って、男女共に仮歌の知り合いを増やす事は、歌の表現力を実感する為にも大事になります。

対策07

人脈も立派なスキル

仮歌や作詞家など、他人とコラボする事で勉強出来る事が多々あります。作品の落とし所を共有、調整することでプロデュース力も鍛えられます。但し、十分な知り合いがいない場合や自分で書いても十分な世界観が到達していない場合は、歌詞なしで提出する方が採用されやすい事も多いのです。とにかく、アレンジや仮歌の所でも共通してますが、提出する作品は「素人感をアピールすること」にならない様にしましょう。

対策08

ミックスの極意

アレンジもミックスも極論すれば、音楽総合力のスキルが必要と言えます。それだけに把握しずらいスキルと言えます。ミックスは、それぞれの楽器の役割に応じて存在感を調整する作業なので、まだあまり理解出来ないうちは、作品がこじんまり聴こえない様に上下左右を使い切ってバランスとる様に心がけましょう。EQとかも各楽器の音量が合わせられてから、使用し始めた方が理解しやすいと思います。作家デモ提出時は、歌が小さくならない事と、全体的な音量も割れない程度まで大きく鳴らすのを注意して作業すると良いです。

対策09

制作スピード

制作スピードは、未経験で研究段階にあるものだと当然時間がかかります。それに基礎を勉強するだけでは、世間に発表する所までたどり着きません。要するに、乱造した人の強みはここで真価が発揮されていくのです。実発注は、内容が細かく指定されていたり制作期間も十分じゃない中で、突貫工事で制作する事が多いです。結局仕事とは、作品の満足感とスピード感の両方を追求するしかありません。そのペースに慣れていく事が、様々なお買い得案件に参加する事になり「採用は何よりもの薬」となって勝ち方を把握していきます。

対策10

無難なメロの原因

メロディを修正する理由として、一番多いのは「無難すぎる」事が多いです。これでいいかとスピードを優先し過ぎると、全体的に無難なメロになってしまい、更に全体的にメロディバランスが取れてしまうと、どこを修正したら良いかがすぐに判断つかないので、それ以上の修正はプロでも困難を極めます。

そうなってしまうのは、いくつかのパターンがあります。
・参考曲が古めの曲で、それを踏襲し過ぎてしまった
・過去制作してきた自分のテクニック(=経験値)に頼った制作
・提供するアーティストの半歩先、もしくは1歩先の想定不足
・自分のオリジナルとしてメロディをどの様に進化させたいか、発展欲不足

特に、今後リリースするものを創作するというのは、過去を踏襲した様な「ありきたり感」ではなく、これからしばらくスタンダードになっていく様なメロディの創意工夫(=進化)は必須です。楽曲が長く愛されるためにも、必要な発想ではないでしょうか。ただ、独自性が強すぎるとアーティストの半歩先感ではなくなってしまうので、その辺りのサジ加減がプロデュース的な感度という事だと思います。
いずれにしても、バランスがとれてしまった無難なメロ程、後から修正するのが大変になってしまうので、制作しながら常に「脱無難」を意識して制作する事に尽きると思います。