歌モノの楽曲を、インストBGM(今回はギター)に編曲した時のお話です。
元々インスト演奏を前提とした楽曲の場合、旋律自体が楽器向けに作られているので、しっかり楽曲や譜面を再現することが大事なのですが、今回のように元々歌用のメロディを楽器で再現する場合、苦労する部分がこの「味」付けの部分です。
歌メロは基本的に、歌に合った歌いやすいようなメロ割になっているので、それを楽器で淡々と弾くと、どうもスーパーの特売所のJ-popのインストBGM(それはそれで好きですが)のようなサウンドになりがちです。
なぜそうなるか考えた事があったのですが、そもそも「声」というのはどんな楽器よりも、最も「味」が濃い楽器で、さらに、「素材(人)」によって「味(音色)」も全然違うので、それだけで十分存在感が発揮できる存在なのです。それに対して、ギターやピアノなどは、素材やメーカーは違えど、一般的に「その楽器の音」として聴こえるし、どの音を出しても同じ抑揚に聞こえるため、声に比べると単調に聞こえるのではないかと考えました。
そこで自分なりに色々研究した結果、楽器でメロを弾くときは、歌のニュアンスよりもさらに2、3歩濃いイメージで抑揚やアクセントを付ける事を心がけています。
例えば、「ド、レ、ミ〜」と歌うようなメロディだと「んドォ、レェぇ、ミィイインぁ」のように、声だとちょっと気持ち悪いくらいの抑揚やアクセントの味付けをする事によって「ちょうど良い」感じになります。楽器の場合はかなり大げさくらいで普通に聴こえます。
さらに、最も見落としがちなのが、「音の出所」ではなく「切り側」です。音を出す瞬間は誰でも意識していると思うのですが、音の切りどころに「どれくらい伸ばすか「ビブラートはどれくらいの大きさで、どれくらいの長さから始めるか」「突然切るのか、グリッサンドで終わるのか」etc…本当に沢山の選択肢がある事に気づいている人は少ないと思います。これが、声だと気づかず自然にできていると思います。それは、「息継ぎ」があるからです。
ピアノやギターと違い声の場合は、息継ぎのために音の切りどころや伸ばし方を、自然に考えて選択しているのです。その選択肢は、打ち込みで入力する楽器には再現しきれない部分です。できたとしても、かなり労力がかかる事ですよね!
なので、「かっこいいインスト音源を作る」というのは、「しっかりと楽器の音色を活かした味付け(演奏)」をする、結局は楽器の練習量と経験がモノをいう。と言う事をお話しました!裏技なんかありません!