ビジュアル系歌詞、完全無知なジャンルだった。
最近はもう、「ストライクゾーンが全く分からない」ということはあまり無かったのだが、今回は完全に迷走した。リファレンスに頂いていたバンドを筆頭に、V系と言われるジャンルの歌詞を片っ端から見ていったのだが、個人的な「好き嫌い」ではなく、単純に「分からない」というのが最初の正直な感想だった。何というか、抽象的な世界観のイメージ歌詞がめちゃめちゃ多く、展開も殆どないので何について歌っているのかが全く分からない。聴きながら何となく考えたのは、「現実感がないほうがいいのかもしれない」ということだった。彼らは「日常の人」ではなく、メイクをしてステージに上がる、「非日常の王子様」とでもいうべき存在であって、それゆえになるべく日常的すぎるリアリティではなく、甘美な雰囲気に聴き手が「浸れる世界」を描くべきなのだろうなと。
結局落とし所をあまり捉えきれないまま、言葉屋として何を書くべきだろうと悩んだのだが、今回はこのジャンル特有の雰囲気を担保している、この「様式美」をしっかり踏襲する、というのを落とし所とすることにした。どうしても、日常の具体的すぎる内容で分かり易く展開を付けていくとその甘美な雰囲気は出ないので、リファレンス作品と同様、単語・フレーズレベルでその世界観を構築していこうと決めた。「紅い血に染まる薔薇」とか「堕ちてゆく女神(Maria)」ぐらいの振り切ったド根性は必要だと思う。「パッと見では内容が分からない」という匂いを醸し出すために、テーマも日常のリアルではなく神話の世界から採ることにした。
いつもであれば、これが良い歌詞かどうかは自分が一番よく分かる。ただ、今回は書き終わってもそれがいまいち自分では判断出来なかったので、「これどうですかね・・・?」という感じで事務所の社長に見てもらったのだが、「ちゃんと照準合わせてきたなと思ったよ」と言われるまで、不安でしかなかった。正直、まだ自分の中で落とし所をちゃんと捉えきれてない感が強い。