前回提出したアーティストの再発注の案件であった。案件の用途も前回同一のものである感じだったので、なんとなく「あ、前の募集でピントの合う曲が来なかったんだろうな」なんてぼんやり考えつつ、もう一度提出を目指すことに。今回は、いくつかリファレンス(※参考曲)のタイプ分けがあった中で、成り行きでスタンダードナンバーのバラードの案件を引き受けることに。しかしこれが難航し、結果的にまるごと3曲別の曲を作るハメになってしまった。
正直、最終的にも「なんとかそれっぽいのを提出はした」という感じで、良いのかどうかはさっぱりわからない曲が出来てしまった。こんな曲に、仮歌代を赤字切って睡眠まで削りながら修正対応しつつ作るのだから、当然、終始全く楽しくない作業であった。ここまで難航した原因は、主に「メロの音域と空白」そして「メロの強さ」に落としどころが見つからなかったからなのではないかと思う。
まず、事務所側から聞いた話も踏まえながら自分の曲を分析すると、ブレスが短いために歌うのが難しい傾向があるのだと思われる。確かに、無意識にそう志向していたかもしれない。これを「限られた音域で」「歌いやすくかつ覚えやすい」メロディに変えていこうということになってくるので、今度は肝心の「良い」のかどうかがだんだんわからなくなってくる。
そして、1番問題に思える「曲の弱さ」については、これには自分の性格や好みが強く関わっている気がしてならない。基本的に、綺麗で切ない感じの“泣き”がある曲を好むからか、これまでもむしろ「弱さ」をさらけ出すタイプの曲ばかり書いてきた気がする。今回のリファレンスが、バラードながら「強くあろうとする姿」を描く曲だったので、なかなかしっくりこなかったのかもしれない。
当たり前と言えば当たり前なのだが、発注を見ても、求められるもののほとんどは「わかりやすくて前向きな気持ちになれる曲」であると思う。ここに、一欠片だけ専門的なアプローチからスパイスを入れれば良いということはなんとなくわかるのだが、曲作りの上ではテクニカルな面だけでなく、気持ちの部分もすごく大切だと感じた。