僕は昔はバンドマンだったので、曲作りの際はメンバーでスタジオに入って何時間もあーだこーだ言いながら、皆でパーツを組み合わせて1曲1曲膨大な時間をかけて仕上げていました。メリットとしては、自分では思いつかないようなアイデアが出るので楽曲の視野が広がりますが、デメリットは、アイデアがぶつかりすぎてまとまらないことです。
プロの作家になってからは、基本的には作詞・作曲・編曲と3つの役割に別れるわけですが、作曲をする立場から言うと、僕個人的に一番困るのが「ラップ」のニュアンスです。仮歌を録る場合、歌い方の違いはあれど、メロディはシンセメロの音符に沿って歌いますが、ラップははっきりとした音情報がない分、シンセメロでイメージを伝えるのはとても難しいです。
また、ラップの場合は楽器プレイヤーでいうフレーズに近い部分があるので、なんとなくイメージで仮仮歌を入れてみても何か違う・・・と言うことに陥ってしまうのと、歌詞の内容とフレーズ、韻の踏み方がとても重要だったりします。
そこで、今回の案件で考えたのが、あくまでもキャッチーなJ-popという意味で、Bメロ、サビはいつも通りメロディをシンセメロで作って、Aメロは完全にラップにしたいので、シンセメロなしでラップの得意な友達と直接電話でやり取りしながら制作を行ってみました。
取り急ぎ、大枠のトラックと、Bメロとサビのメロが入ったものだけ仕上げてしまい、歌詞のイメージだけ伝えて、好きなようにラップしてもらい、そこからあーだこーだ言いながらブラッシュアップしていく。
最終的に出来上がったものがより浮き立つようにトラックを調整して完成。色々やり取りしながら作った分、時間はかかりましたが、よく考えてみると、自分ひとりで「メロディが出てこない・・・」と悩んでる時間より余程有意義な内容だったと思っています。
明確に、自分ひとりで表現したい内容が決まって入れば話は別ですが、今回のような自分に足りないものが必要な場合「バンドメンバー」まではいかなくとも、自分と違う武器を持つ仲間と協力すると、さらに良いものができる「可能性」があると感じた制作でした。